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更新:2018年06月04日(月)
【福岡県糸島市】子どもたちが安心して食べる『つまんでご卵』を|緑の農園・早瀬憲一

5月とは思えない暑い日差しの糸島市。取材に伺った日は青空広がる快晴。
そんな暑さの中、元気に庭を動き回るニワトリたち。こんなにイキイキとしたニワトリを見たのは初めてのことでした。


福岡県糸島市で養鶏業を営まれている『緑の農園』さん。看板商品である「つまんでご卵」は糸島市に限らず大人気の商品。2代目である早瀬憲一さんにお話を伺いながら、糸島での暮らしや自分が食べる食について考えなおしました。

ニワトリの幸せを追求する
–こんなにニワトリがたくさん動いているのは初めて見ました。
「そうですよね。ニワトリの飼い方には『ケージ飼い』と『平飼い』の2種類あります。私たちはその中でも、地面の上で鶏を飼う『平飼い方式』で育てています。」
「実は、今の日本にいるニワトリのほとんどが『ケージ飼い』という方法なんです。なぜケージ飼いが多いかというと、効率がいいから。空間を立体的に活用できるので単純に採れる卵の量が多いのです。」

「では、なぜ私たちがケージ飼いに比べてコストがかかり、生産量も限られてる、効率の悪い『平飼い』で育てているかというと、『ケージ飼い』よりも圧倒的に質の高い卵が産まれるからなんですよね。」
「しっかり運動してのびのびと暮らす。鶏のやりたいことができる環境だと、臭みが無く味の濃い卵ができるんですよね。本当においしいんです。」

「緑の農園式の平飼いで育てると公害を無くすことが出来るんです。悪臭、騒音、ハエ、汚水、ホコリを私は5大公害と呼んでます。」
「養鶏には公害がつきものだと言われてきましたが、私達は独自のノウハウでこれを抑えることができました。」


「そのおかげで、地域の方と良好な関係で養鶏が行えています。農業はその土地、地域に根付いて行わないとできません。これは卵に限らずブランドを確立していく中でとても重要なことです。」
「お客様に最高のものを届けていくというのはもちろんですが、地元の方との関係を蔑ろにしないということも特に大切にしています。」
糸島ではじめた卵作り
—-いつ頃から糸島で養鶏場を始められたのですか?
「平成元年に、父である社長が糸島で養鶏を始めました。もともと父は小さいころ岐阜の田舎の方にいたのですが、子どもの頃からニワトリが近くにいることが多かったそうです。」
「庭先で飼っているニワトリをおばあちゃんに手を引かれながら、宝探しのように卵を探していた。その経験から人間に卵を与えてくれるニワトリや養鶏のことを好きになったそうです。」

「それから大人になってからも養鶏の商社に入ったけど、ずっと自分で子どもの頃のような放し飼いの養鶏をしたいなと思っていたそうなんです。」
「転機は父が慢性腎不全を発病したことでした。その影響で、出張や現場仕事の多いサラリーマンをすることはなかなか難しくなりました。それなら、ずっとしたかった養鶏をしようということで、母の実家であった福岡に移ってきました。」


—-つまり糸島には移住されてきたということですね?
「そうですね。糸島には移住してきてから平成元年から養鶏を始めました。しかし、移ってきたばかりの人間がいきなり『養鶏をやりたい』と言っても、養鶏には公害がつきものだというイメージがあったため、地域の方から反対されました。」
「しかし、200羽から養鶏を始めさせてくれと言った所、『その羽数なら道楽と一緒たい。』と言ってくれて、平飼い養鶏を始めることができました。そこが私たちのスタートです。」
偶然から生まれた『つまんでご卵』
—-つまんでご卵というブランドができたのはいつ頃からですか?
「平成4年に、地元ローカルのテレビが取材に訪れました。取材で卵をお皿に割り撮影していたんですね。」
「そのときに、ふと父が『この卵は指でつまめるんじゃないか?』と思ったそうで。いざつまんでみようとすると、つまむことができたんです。それが「指でつまみあげられた卵」が世に初めて知られた瞬間でした。」


–ということはテレビ取材の時に、偶然つまむことができると発覚したわけですね?笑
「そうなんです。以前、卵の名前は無かった(早瀬さんの自然卵と呼んでいただけ)ので、そこからネーミングを付けてしっかりブランド化しようと考え、「つまんでご卵」という名前になりました。」
「これも父が15秒ぐらいで思いついたそうで。お客さんがすぐにイメージできる名前にしようということになりました。本当に偶然なんですよね(笑)」


「私たちはニワトリが住みやすい環境を作っていきたいと思っています。卵って基本はニワトリのストレスで変わってくるんですよね。」
「ですので、できるだけニワトリがストレスを感じないようにエサにこだわったり、平飼いにしたりと全力でサポートします。私たちは、『環境8割、餌2割』を養鶏の信念においてます。ニワトリが100%発揮できる環境を整えることに全力を尽くしたいんです。」
次の世代が安心して食べられる物を。
「1999年には、卵や地域の方の野菜などを販売する直売店をスタートしました。この直売所のコンセプトが①本当の意味で安心安全なもの、②本来の造り方をしたもの、③なによりもおいしいものを取り扱おうと。」


「もともと父が腎不全になって糸島で新規就農したわけですけど、お医者様に言われた腎不全の原因が『多忙と食生活』だったんです。」
「だったら、自分が食に携わるものとして次の世代に食による不安を残したくないと。どんなにコストがかかっても、次の世代が安心して食べられる食べ物を提供していきたい。」



「そのような思いも含めて、10年前に地元の小麦粉と卵を組み合わせてケーキを作ろうということになりました。直売店に続いてケーキ屋さんですね。」
「私たちの芯の部分は卵の生産ですが、卵の直売と卵の加工まで色々とチャレンジしていきたいと思っています。糸島のここにくれば卵に関しては全部楽しめるというような場所にしていきます。」
もっと農業を誇れる産業に
「この会社を作り上げてきたのは父なんですね。よく『親父を超えろ』といわれたりしますが、親父を超える事を目標に農業をするのではなく、親父を自慢しつつ、もっと私たちの卵を食べてもらえるようにしていきたい。」
「比較したって始めた時代や環境も違うわけです。比較するのではなく、親父が作ってきたものを、もっともっといい方向に展開して厚く強くしていきたいです。将来的には並び称される人間になりたいですね。」



「またもっと農業の価値も高めていきたいですね。地元の有名大学の学生が大手企業を目標とするのではなく「農業をすることが第一選択」になるようにしていきたいです。」
「農業はこれからもっと可能性がある業種だと思います。私は養鶏しかできませんが、もっと農業を誇れる仕事にしていきたいと思います。」

緑の農園
平成元年9月糸島市で創立。鶏卵の生産、加工、販売まで行う。ブランド『つまんでご卵』生産しながら、直売店「にぎやかな春」を平成11年に開設。平成20年に「つまんでご卵ケーキ工房」を開設。
http://natural-egg.co.jp/
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