あの街にしかない
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唐津市北波多の杉谷窯異中庵を訪ねていくと作業場の奥にロクロに向かう男性がいらっしゃいました。

肌色がよくしっかりした腕。真剣な目つき。黙々と陶器に向かう陶芸家 夏秋隆一さんの姿がありました。

長い間陶器を作り続けられている夏秋さん。お話を伺っているうちに、夏秋さんの陶器づくりへの情熱に圧倒されました。

完成形がない陶器づくり。ワクワクして、これからも探求しつづける杉谷窯異中庵 夏秋隆一さんを取材しました。

【親子二代で岸岳山の土に魅せられて】

—今、おいくつですか?

「今70歳です。(2018年11月現在)陶芸は50年くらいやっています。 」—50年も杉谷窯異中庵をやられているんですね!

「いや、私は今二代目です。親父が一代目で、ここが杉谷という地名だったから杉谷窯。それから中国の真玉泥中異(しんぎょくでいちゅうにいなり)ということわざ(泥の中にあっても光り輝いていること)から、『杉谷窯異中庵』と親父が付けました。

親父は焼き物の小売り業をしていましたが、純粋に焼き物が好きでした。特に岸岳山付近で作られる焼き物が好きだったんです。

唐津にはたくさんの土があって、土のとれる場所で全然作品が違うんですよ。合併する前の北波多村っていうところがたくさんある唐津焼の中でも『唐津焼発祥の地』と言われています。」そんなたくさん種類がある中で、ここ岸岳山の土を選んだのはなぜですか?

「若い頃は私もいろいろな場所に見に行っていました。その中でも、やっぱり岸岳山付近で作られる焼き物が好きでした。岸岳の土は本当にいい土なんですよ。普通は土屋さんから土を買う窯元がほとんどですが、私は原土を持っています。」


—原土を持っているとはどういうことですか?

「近くの田の中の土です。私がここで陶器を作るようになってから、初めの冬に「原土を掘らせてくれ」といって掘らせてもらいました。岸岳山付近の田の下にきれいな粘土質の土があるんです。

何十年分か掘りましたからね。私の代ではなくならないくらいありますよ(笑)

それを乾かして、木屑なんかを取り除いて保管して、使うときに砕いで練って寝かせておくんです。この作業が力仕事だから、結構きついんですよね。」「ここの土は砂っぽいから練って置いておかないと、粘り気が出てこないんです。ロクロで形を作れるような粘りがになるまで、2ヶ月くらいかかります。

唐津焼は土が重要ですが、私が自慢するのはこの土なんです。焼き物の裏を見ればわかりますよ。」

【離れたから気づけた焼き物の良さ】

—夏秋さんもお父様と同じように焼き物が好きで陶芸をはじめたんでしょうか?

「いやいや、最初は都会で普通に働きたかったんです。やっぱり若い時はそうじゃないですか?(笑)

父に『窯を継ぐように』と言われていましたよ。でも最初は『嫌だ』と言って、大阪で普通のサラリーマンをしていました。

逆にそれがよかったのかもしれないです。陶芸以外の世界を見て、嫌なことも楽しいこともありましたからね

サラリーマンを辞めて陶芸の道に入った時に、さらに焼き物の良さがわかるようになりました。親父がなんであんなに焼き物が好きなのか、自分がこの道に入って改めて気づくことができました。

—夏秋さんにとって、作ることがとても充実していることが伝わってきます。一番好きな作業ってあるんですか?

「ロクロに向かっているときが一番楽しいですね。形を作りながら、

『どんな釉薬かけようか』

『絵はどうしようか』

『どんな風に仕上げようか』そんなことを考えながら作るのが楽しみです。」「作る作業は楽しいです。やっぱり楽しくないと、この仕事は続けられないと思いますよ。嫌いだったら一人で黙々と作り続けるのは苦痛でしょう(笑)

作ることが楽しいから陶芸を続けているのだと思います。」

—50年近くされてきても、未だに「作っていて楽しい」と言える夏秋さんが素敵だと思います。熟年の陶芸家のイメージは自分自身と向き合っているような「とっつきにくい」イメージだったので。

「私も上手くいかなかったり、順調だったりという人生の波は沢山ありました。生活が苦しくて厳しくて辛いけど、作るのが楽しいというのが、もう一つ上の段階にあったので、今まで陶芸を続けられています。」

『食べるためじゃない、私は作るのが楽しいから作ってる』って自分で思っています。

確かに、明日食べていけないような日もあったんですよ。でも、作るのが楽しくてね。ここまできました。

もう70歳だから言えることですよ。30代の若いころには、こんなふうには言えてないですね。だから、今若い人のいうことはわかります。人生、そんな不安もあるだろうなって(笑)

【好きなものを一心に追求する】

—杉谷窯異中庵のこだわりは何ですか?

「私のこだわりは薪で炊くことと、岸岳の土を使って焼くことです。私は薪を炊いて焼いた唐津焼の焼き上がりは全然違うと思っています。

だから私は全ての作品を約2ヶ月に一回、窯で焼き上げています。」

「本当に昔の人はすごいなと思います。『この土にはこの釉薬、この土にはこの温度』なんて今でも使える、生きる製法を生み出していますからね。

いいデザインは、今でも『すごいなぁ!』と思うものもあります。私たちは真似をしているだけだからですね。昔ながらのデザインは今でも私たちを惹きつけるものを持っているんです。それを見たら、唐津焼の良さがわかると思います。」

「私もまだまだ上手に作れるようになりたいと思ってます。

『もう完成だ、俺の技術は一番だ』なんて、そんな失礼なことは言えないです。

私より上手に作る職人さんはいくらでもいるはず。だからもっと上手になりたいと思っています。

でも、もう70歳になるので『まねる』というよりは、自分の焼き物を追求しようと思っています完成しないから面白い。完成してしまうものはおもしろくないです。

だから、私が元気にしゃべって動ける間は作り続けて、薪で炊こうと思っています。」