あの街にしかない
オンリーワンギフトを贈ろう

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私たちが窯元を訪れたのは、秋も終わりに差しかかるシトシト雨が降る日でした。

岸岳窯三帰庵は、どこか懐かしい小道を通りぬけた先にスッと現れます。暖色系の電球のぶら下がる作業場にはやさしい土の香り。

ピリッとした緊張感の中、ロクロを回して作業されている冨永さんがいらっしゃいました。

【唐津焼は土探しから始まる】

—今されていた作業はなんですか?

「高台(こうだい)という、湯呑の裏側の卓に接する部分わかりますか?

そこを削り出しているところです。今日みたいな湿気の多い日は、土の乾きが遅くて、ちょうどいい硬さじゃないと削る作業に入れないんです。

何時間置いておくという決まった時間があるわけではなく、触ってみてちょうどいい硬さになるまで水分抜けているなってこれまでの経験で大体わかるんですよね。」

【祖父から続く窯元】

—岸岳窯三帰庵はいつ頃始められたんですか?

「ここに窯を作って80年は経ちましたね。私の祖父がここで始めました。

祖父の両親も陶芸をやっていたんですよね。

岸岳というのは、岸岳山という山の名前です。岸岳山で唐津焼の原料の土が取れるので、地名から名前をつけました。

三帰というのは中国語で『三回帰依する』(仏・法・僧の三宝に帰依する)という言葉があるのですが、そこから取って『庵』をつけて『岸岳窯三帰庵』と祖父がつけたと聞いています。」

—岸岳山は唐津焼の元になる土が採れるんですね。

「そうです。唐津焼の種類は沢山あるんですよ。なぜかというとそれぞれ土が違うからなんです。

5m離れただけでも、土質は違います。土を探すところからが私たちの仕事なんです。唐津焼だけでなく、全国にある陶器の違いは土ですね。」

「唐津焼には『土見せ』と言って、高台の部分には釉薬をかけずに土を見せる特徴があります。陶器好きな方はまず裏側の高台部分の土を見て選ぶんですよ。」

—陶芸家といえばロクロのイメージしかなかったので、まさか土から探すとは思っていませんでした(笑)

「唐津焼は、すべての工程を職人1人がしなければならないんですよ

土探しから、枝や根などを取り除いて土をつくり、水を混ぜてこねて、ロクロで形を作ります。乾かして高台を削り出し、絵を書くこともありますし、釉薬をかけて、窯炊きをして、酸化還元の具合を気にしながら焼く。全部で10工程以上あります。」

唐津焼は、沢山の工程をすべてやらなければいけないので大変ですが、逆に自分にしかできない作品を作れるので、そこが面白いところですかね

50歳、60歳はハナタレ小僧と言われる世界。終わりはないですよ(笑)」

実際に工程を聞くと、とても時間がかかって作られていることが分かります。一番好きな工程はありますか?

輪積みといって、粘土をひも状にして円を描くように積み重ねて形を作る方法があるんです。その中に木で叩いて、粘土同士をつなげていく作業があるんですよね。

その工程はうまくつなぎ目を密着させるために集中しなければならないので、より真剣になります。」

「大きなツボなんかを作るときも一緒です。つなぎ目を感じさせない表面を作るのに真剣になります

あとは、やっぱり焼き上げて窯を開けるときですかね(笑)

焼きあがって出来上がったものを見るときが未だに一番ドキドキします。」

【使う良さを感じられる作品を】

—これから冨永さんが作っていきたい唐津焼はどんなものですか?

「使う人が、使う良さを感じられるものを作っていきたいと思っています

そのために作り続けるだけではなく、外に出ていって販売したり直接声を聴いたり、作り手を知ってもらったりすることが、大切かなと思っています。」

 「たとえ買ってきた料理だとしても、お皿に移し替えて食卓に並べることで、食事の楽しみが一味も二味も増すと思います。そんなふうに、お皿の良さを感じてもらえればなと思いますね。」

自分の心が作品に見え隠れする陶芸の世界。

唐津焼発祥の地 北波多で祖父の代から続く岸岳窯三帰庵の冨永さん。陶器ならではの温かみとゆるぎのない職人の技が詰まった作品で、家族が集まる食卓を彩ります。